はじめに:なぜ今「副業規定」が注目されているのか?
2018年、厚生労働省がモデル就業規則を改定し、
「副業・兼業を認める」方向へ大きく舵を切りました。
これまで多くの企業が「副業禁止」を当たり前としていましたが、
今では政府も企業も副業を前提とした働き方を推進しています。
特に2027年以降は「副業解禁・義務化」の流れが強まり、
企業は「社員が安心して副業できるルール(=副業規定)」を整備する必要があります。
この記事では、
副業規定とは何か
作成のポイントと法的注意点
実際に使えるサンプル文例
をわかりやすく解説します。
第1章 副業規定とは?目的と必要性
1-1. 副業規定とは?
「副業規定」とは、社員が本業以外の仕事を行う際のルールを定めた就業規則の一部です。
企業が副業を認める場合でも、
情報漏えい
労働時間の管理
利益相反(競合行為)
健康管理
などの問題を避けるため、あらかじめ社内でガイドラインを整備しておくことが求められます。
1-2. 副業規定を設ける目的
副業規定の目的は、
「自由」と「リスク管理」のバランスを取ること」にあります。
社員の収入機会を増やす
社外経験でスキルアップを促す
企業ブランド・機密を守る
労働トラブルを防止する
つまり、副業を「禁止」するためではなく、
安全に運用するためのルール作りが副業規定の目的です。
第2章 厚生労働省のモデル就業規則における副業規定
2018年以降のモデル就業規則では、副業について次のように記載されています。
🔹【モデル就業規則(厚生労働省)第68条の例】
第68条(他の会社等の業務に従事すること)
労働者は、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる。
ただし、次の各号のいずれかに該当する場合はこの限りでない。
労務提供に支障がある場合
企業秘密が漏洩するおそれがある場合
競業に該当する業務を行う場合
会社の名誉や信用を損なうおそれがある場合
このように、政府は「原則自由・例外制限」という立場を取っています。
つまり、特別な理由がない限り、副業は認めるべきというのが現代の基本方針です。
第3章 副業規定を作るときの5つのポイント
① 申請・承認の手続きルールを明確に
副業を自由化しても、事前に届出・申請を求めることでリスクを減らせます。
例:
副業を希望する場合は、所定の届出書により上長および人事部門の承認を得ること。
② 禁止行為を具体的に定義する
「会社に不利益をもたらす副業は禁止」では曖昧すぎます。
競合・情報漏えい・公序良俗違反など、具体例を挙げることが重要です。
③ 労働時間管理を意識する
副業先での労働時間を含めて週40時間以内に抑えるなど、健康リスクを防ぐルールを設けましょう。
④ 機密情報・知的財産の扱いを明記する
副業で会社情報を利用することがないよう、明確に禁止条項を入れます。
⑤ 健康・安全への配慮
睡眠不足や過労を避けるため、「健康に支障がある場合は副業を制限する」などの条項を追加します。
第4章 副業規定のサンプル文(テンプレート)
ここでは、実際に使える副業規定サンプル文を紹介します。
中小企業・スタートアップ・大企業で使える汎用的な形式です。
【副業規定サンプル】
第○条(副業の定義)
本規程において「副業」とは、従業員が当社での勤務のほかに、報酬を得ることを目的として他の事業または職務に従事することをいう。
第○条(副業の原則)
従業員は、勤務時間外において副業を行うことができる。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は認めない。
本業の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
当社と競合する業務を行う場合
当社の信用・名誉を損なうおそれがある場合
機密情報の漏洩につながる行為を行う場合
法令または公序良俗に反する行為を行う場合
第○条(申請および承認)
副業を希望する従業員は、所定の「副業届出書」を提出し、所属長および人事部門の承認を得なければならない。
届出内容に虚偽があることが判明した場合、承認を取り消すことができる。
承認後も、会社は業務に支障が生じたと判断した場合、当該副業を制限・停止できる。
第○条(報告義務)
副業を行う従業員は、会社の求めに応じて副業先での労働時間および収入状況を報告しなければならない。
第○条(健康管理)
会社は、従業員の健康を保持するため、過重労働が懸念される場合には副業を制限することができる。
第○条(違反時の措置)
従業員が本規程に違反した場合、懲戒処分の対象となることがある。
このように、「原則OK・例外制限」+「申請制」+「健康配慮」が現代の標準形です。
第5章 副業規定を導入する際の注意点
1️⃣ 社員への周知・同意を忘れない
就業規則を改定する場合、労働基準法第106条に基づき、
全社員への周知が必要です。
社内ポータルや説明会でしっかり通知しましょう。
2️⃣ 個人情報・副業先情報の取り扱い
届出制を導入する場合でも、過剰な情報開示を求めないよう注意。
副業先の名称・勤務時間程度で十分です。
3️⃣ 税務・社会保険への配慮
副業によって収入が増えると、住民税や保険料が変わります。
「副業が会社にバレる」原因の多くは住民税通知です。
企業は税務上の配慮も行いましょう。
第6章 副業規定の導入が企業にもたらすメリット
社員のスキルアップ・モチベーション向上
副業で得た知識を本業に還元する社員が増加。
採用力の向上
「副業OK企業」は求職者に人気が高く、採用ブランディングにも有効。
離職防止につながる
社員が社外活動で自己実現できると、会社への満足度が上がり、結果的に定着率も向上。
新規事業の創出効果
社員が副業で得た経験・人脈から、社内イノベーションが生まれることもあります。
第7章 2027年以降の「副業規定」トレンド
政府は2027年を目標に、
「希望するすべての人が副業・兼業できる社会」を実現する方針を掲げています。
この流れを受けて、今後の副業規定は以下のように変化していくと予想されます。
✅ 「副業禁止」ではなく「副業許可制」が標準に
✅ 健康管理・メンタルヘルスの義務化
✅ 労働時間の自己申告制度の導入
✅ 副業経験を人事評価に反映
つまり、副業規定は「制限ルール」から「活用ルール」へ進化していくのです。
第8章 副業規定サンプル導入チェックリスト
導入前に以下の項目を確認しておくとスムーズです。
チェック項目 内容
✅ モデル就業規則の改定内容を反映しているか 厚労省ガイドライン準拠
✅ 申請・承認フローを明確にしているか 曖昧だとトラブルのもと
✅ 禁止行為が具体的に定義されているか 「競合」など曖昧表現を避ける
✅ 健康・安全配慮があるか 長時間労働防止条項
✅ 社員への周知計画を立てたか 告知・説明・同意書の整備
第9章 まとめ:副業規定は“働き方自由化”の第一歩
かつては“副業禁止”が当たり前でしたが、
今では“副業をどう活かすか”が問われる時代です。
副業規定の整備は、
企業にとっても社員にとっても「信頼関係を可視化する仕組み」です。
ルールを作ることで初めて、社員は安心して挑戦でき、
企業はリスクをコントロールできます。
✅ 今日のまとめ
副業規定は「自由+安全」のバランスを取るために必要
厚労省モデル就業規則は「原則OK・例外NG」が基本
承認制・健康配慮・禁止行為の明確化がポイント
2027年以降は「副業前提社会」に突入
副業規定は“禁止するための武器”ではなく、
“社員を守るための盾”です。
ルールを整え、企業と社員の双方が安心して働ける環境を作っていきましょう。


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